紹介者宮下陽一の家は鉄筋三階建のビルで、一階が事務所になっていた。彼の両親は共同で司法書士 事務所を開いているのだ。看板の下の「登記手続き一切・不動産鑑定もいたします」という文字 と、その横の緑豊かな町並みの絵は、どうやら陽一の手になるものらしい。 陽一の母親は、彼とよく似たきゃしゃな身体のひとだった。案内されたのは三階の奥の部屋で、 ドアの脇には陽一の作品がおさめられた額がかけられている。 ノックすると、小さな声が答えた。 「どなたですか」 「つるさんはまるまるむし」 ドアが開いた。陽一の、もう泣き出しかけている顔がのぞいた。 (同書文庫本216ページ〜217ページ)

