「司法書士の三木です」
山井に名刺を渡し、山井もまた名刺を三木に差し出した。
「どうも、はじめまして。山井印刷の山井です。お忙し
いところ時間を取らせて申し訳ありません」
「いや、構いません。今、一通りの事情をうちの事務員
から聞きました。しかし、妙な話ですね。売買した覚え
もないのに、所有権移転が為されている。今年の、十月
十五日・・・・・・、ついこの間じゃないですか」
女性事務員の手によって、今日取得して来たばかりの
登記事項証明書に目を落とすと、三木はそう言った。
「そうなんです。全く覚えがないんです」
「そうですか」
落ち着き払った口調で、三木は呟く。
司法書士の三木清道(みききよみち)は、銀行マンあ
がりである。若い頃、某銀行のエリート行員として入社
したが、組織に馴染めず銀行を去った。組織を必要とし
ない、一匹狼的な性格を持つ。その後、ゴルフ会員権等
の販売を手がけていたが、これも断念する。やがて、一
念発起し司法書士の資格に挑み、みごと合格して司法書
士になった。三木は司法書士と不動産鑑定士の資格を併
せ持つ。弁護士、公認会計士と並び称される、不動産鑑
定士の資格をみごと一発で合格している。もっとも司法
書士の方は、数年かけたようではあるが。三木はその経
験の豊富さから、一種掴み所のない一面も持ち併せてい
る。
(同書73〜74ページ より)